
慢性腎臓病
慢性腎臓病
慢性腎臓病(CKD)は腎臓の働きが健常人の60%未満に低下するか蛋白尿が出るなど腎臓の異常が3カ月以上持続する病態です。CKDは末期腎不全、心血管疾患、死亡などの重篤なリスク因子となりますが、初期は自覚症状に乏しく健診などで偶然指摘されることがあります。
慢性腎臓病の発症や進展には高血圧症と糖尿病などの生活習慣病が原因として重要です。他にも高齢、家族歴(家族に腎臓病の人がいる)、健診での尿異常や腎臓機能異常、脂質異常症、高尿酸血症、肥満(メタボリックシンドローム)、喫煙、鎮痛薬の常用などもリスク因子として知られています。
糖尿病は慢性腎臓病(CKD)のなかで最大の重要な原因疾患です。透析導入の原因疾患としても4割程度を占めますが、治療法の進展、きちんとした管理・対策が進んでおりその割合は減少しています。
持続した高血圧により生じた腎臓の病変です。高齢化が進んでおり透析導入の原因としては持続的に増加しており、重要な課題となっています。
IgA腎症が知られており感冒や扁桃炎により腎臓に免疫グロブリンが沈着し炎症を起こすことで蛋白尿や血尿が出現する慢性の腎炎です。比較的若い人に多い疾患で検診を契機に発見されることが多いです。確定診断には腎生検と言われる病理診断が必要となります。
両方の腎臓に多発性の嚢胞が出来て徐々に大きくなり、進行性に腎機能が低下する、最も頻度の高い遺伝性腎疾患です。男女差はなく、50%の確率で子供に遺伝します。 家族歴がなく、突然変異として新たに発症する場合もあります。多くは成人になってから発症し、70歳までに約半数の人に透析が必要になるといわれています。高血圧、肝嚢胞、脳動脈瘤、心臓弁膜症など、全身の合併症もあり、その精査を行うことも大切です。
慢性腎臓病(CKD)は初期にはほとんど自覚症状はありません。以下の症状を自覚される時には既に進行していることもあります。以下のような症状を自覚された場合には早めに受診されてください。
慢性腎臓病(CKD)は早期には自覚症状がほとんどみられないため、早期発見には定期的な健康診断が重要になります。健診で尿検査異常やクレアチニン、eGFRの数値に異常を指摘された場合には放置せずに精密検査を受けることをお勧めします。お気軽にご相談ください。
自覚症状がある場合にはCKDが進行している可能性もあるため、腎臓内科専門医へご紹介いたします。
自覚症状に乏しい慢性腎臓病(CKD)ではきちんとした検査が診断には必要です。腎機能が長期間安定していても定期的な血液検査や尿検査が重要です。
当院では以下のような検査を行います。
検尿で尿蛋白、尿潜血の有無を迅速に測定できます。陽性の場合にはより詳細な検査を外注します。
血算(貧血の有無)、生化学(クレアチニン、eGFR、尿酸、脂質、血糖、電解質など)の検査を行い、異常を認めた場合には詳細な検査を外注します。
腎臓の形態から腎障害が急性なのか慢性なのか、遺伝疾患(多発性嚢胞腎)、泌尿器疾患(尿路結石など)などを鑑別することができます。また悪性疾患のスクリーニング検査にもなります。
CKDは進行すると余分な水分や塩分を排泄できなくなるため、肺水腫や胸水を認めることがあります。また心血管疾患のリスクとなるため心不全の精査にも必要です。
心血管疾患の有無を定期的に検証する必要があります。必要時には循環器専門医へご紹介いたします。
慢性腎臓病の治療は、病状の進行度や患者の状態によって異なりますが、主な治療法には以下のようなものがあります。
慢性腎臓病(CKD)の治療薬として使用頻度が増加している薬です。
糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、糖尿病関連腎臓病(DKD)患者さんにおいては第一選択薬とされています。糖尿病非合併CKD患者さんにおいても腎機能低下の進展抑制および心血管イベントと死亡の発生抑制が期待できるため投与が推奨されています。しかし、投与後一過性に腎機能低下、低血糖、脱水症、ケトアシドーシス、尿路感染症などがみられる場合があります。
血圧管理はCKDの進行を遅らせることに加えて心血管疾患リスクを低減するのに重要です。血圧には季節変動があり、夏には血圧が低下する場合があるため、降圧薬の調整が必要となることもあります。
慢性腎臓病(CKD)患者では脂質異常症の治療により心血管疾患イベントを抑制し、腎機能低下を抑制する可能性があるといわれています。LDLコレステロールを120 mg/dl未満にコントロールすることが重要です。
CKDの治療法は前述の通り患者さんの健康状態や病状の進行度によって異なるため、医師との綿密な相談が重要です。CKDは進行を遅らせることは出来ても、健康な状態に治すことはできません。末期腎不全となり腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎臓移植)が必要となることもあります。透析は絶対にしたくないという患者さんも多くいます。選びたくない選択肢だからこそ人生の目標や価値観を考慮し、患者さんと医療者がともに治療法を選択していくことが重要だと思います。
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