呼吸器の主な病気
かぜ
普通感冒と言います。80%以上がウイルス感染によって起こり、主に鼻や喉の症状で、通常は1週間以内に治ります。解熱鎮痛剤、鎮咳剤、去痰剤など対症療法が中心です。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスによる急性熱性感染症で、A、B、Cの3型があります。通常、寒い季節に流行します。感染してから1~5日の潜伏期間の後に、突然の高熱、頭痛、関節痛、倦怠感などが現れ、咽頭痛、鼻汁、咳、痰などの症状が続き、1週間位で軽快します。主な合併症とし肺炎、脳症が重要です。かぜ症候群と比べて、急激に発症し、全身症状が強いことが特徴です。
感染力が強いため、短期間に多くの人へ感染が拡大しますので、ワクチンによる予防や早期治療(内服・吸入・点滴)が大切です。
新型コロナウイルス感染症
2020年に全世界に流行して、当時は死亡率が高い感染症でした。現在は治療法が確立して市中感染症扱いになりました。発熱、咽頭痛、咳で発症する場合が多く、かぜやインフルエンザとの鑑別が困難な場合があります。早期に抗原検査を行い、治療されることをお勧めします。
肺炎
肺炎は病原微生物によって、細菌性肺炎(定型肺炎)、非定型肺炎、その他(ウイルス性肺炎、肺真菌症他)の3つに分類されます。
細菌性肺炎は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で起こり、湿った咳とともに、黄色や緑色を帯びた痰が出ることがあります。高齢者や基礎疾患のある人に起こりやすい。
非定型肺炎は、マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラなど感染によって発症し、激しい咳の割に痰が少ない。基礎疾患がない若年層にも多い。細菌性肺炎とは抗菌薬がことなる場合がありますので、注意が必要です。
ウイルス性肺炎はインフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなどのウイルスが原因で起こります。細菌性肺炎とは治療法が異なります。空気感染にも注意が必要です。
問診、血液検査、抗原検査、X線検査・CT検査などから病原微生物を推測することができますので、早めに受診して、適切な治療を受けられることをお勧めします。
長引く咳
咳がなかなか治らず、数週~数カ月長引くことがあります。咳はその期間によって急性の咳(3週間未満)、遷延性の咳(3~8週間)、慢性の咳(8週間以上)の3つに分類されます。3週間以上続く場合、かぜではなく、他の病気の可能性があります。長引く咳は原因を特定したうえで治療を行うことが大切です。早めの受診をお勧めします。
気管支喘息
気管支喘息は一般的に「喘息」と呼ばれています。個体因子(遺伝的素因など)や環境因子(アレルゲン、ウイルス感染)が関与して気道の慢性炎症が生じ、様々な刺激に敏感になり、発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。喘鳴(のどがゼーゼー鳴ること)や咳・痰・呼吸困難がみられ、夜間や早朝に発作が出やすいという特徴があります。大発作の場合には命にかかわることもありますので、要注意です。
喘息発作が起きてから受診される方がいますが、適切な診断と治療により発作を起こさないようにすることが重要です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、慢性気管支炎や肺気腫の総称です。主な原因はタバコ煙などの有害物質の吸入や加齢といわれています。慢性進行性の気管支の炎症や肺の弾性の低下が起こり、慢性の咳や痰がみられ、進行すると息切れや呼吸困難を起こし、日常生活に支障をきたします。重症化すると呼吸不全に陥り、酸素吸入が必要になります。肺気腫は肺がんの発生母地となりますので、要注意です。
治療の基本は禁煙が第一です。早期診断・早期治療により呼吸機能障害の進行を抑制することが重要です。
肺がん
肺がんの原因として最も重要なのが喫煙です。「1日の喫煙本数×喫煙年数」が400以上では肺がんになる危険性が高くなるといわれています。
肺がんは、腺がん、扁平上皮がん、神経内分泌がん(小細胞がんなど)に分類され、それぞれ治療法が異なります。早期に発見される場合には手術が第一選択になりますが、周囲のリンパ節や肺内の別の部位に転移したり、骨、肝臓、脳、副腎などに遠隔転移をきたしている場合には、制がん化学療法、分子標的薬治療などを選択します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきとともに睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間に5回以上繰り返される状態をいいます。この状態が繰り返し続くと睡眠障害のため、日中の強い眠気や倦怠感、起床時の頭重感などが現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
睡眠中に低酸素状態となり、それが毎晩、年単位で起きれば、心臓・血管系の病気や多くの生活習慣病と関連してきます。古くから高血圧症との関連性が報告されていますが、冠動脈疾患や脳卒中の発症にも関係するとされています。自覚症状がある場合や家族や同僚に指摘された場合には、できるだけ早く診断して、治療を始めることをお勧めします。